ホリディ

 いつからそれに気付いたんだろう 自覚したのはごく最近
 「こうありたい」って明確なビジョンは もっと小さな頃からあった
 そのためだけに髪を伸ばした そのためだけに自分を磨いた
 ボクはもう迷わないんだ 理想の自分に化けてみせる

 「可愛い」って言われるのが好き 「かっこいい」より断然好き
 「カッコよく」なんてなれなくていい 誰よりも「カワイく」ありたかった
 パパやママには感謝してるよ 同時に申し訳なく思うけどね
 男の子なのに女の子みたい ボクのIDはそれでいい

 朝目覚めたら、髪を梳いて ほんの少し、お化粧をして
 いつも穿いてるジーンズじゃなくて お気にの赤いミニスカートを穿くの
 上着は白のポロシャツがいい ソックスは白のショートソックス
 姿見の自分をちょっとだけ見つめる 今日だけ、ボクは女の子になる

 パパのちょっと泣きそうな顔と ママの呆れた顔を振りきって
 我が家のドアを開けた向こうは いつもよりも綺麗な世界があった
 おろしたてのローファーを 軽く鳴らして歩いていこう
 良いことが待っているといいな 少し期待に胸が躍った

 すれ違うみんながボクを見て 足を止めたり目を見開いたりする
 そんなにボクって、目立ってるのかな? ショーウィンドウを見て、考えちゃう
 ズボンを穿いている時よりも なんだか足が軽やかなんだ
 今にも歌い出しそうなぐらい ボクの心が高ぶってる

 なんにも目的を持たないで なんとなく街をブラブラするの
 いつもだったらつまらないのに 今日はなんとなく楽しいんだ
 ボクは今、とても自由だ 背中に翼が生えた気分
 女の子の世界ってとてもステキ 男の子じゃ考えらんない

 歩き疲れて休んでいたら とても聞き覚えのある声がした
 顔を上げたら、学校の友達 ボクの顔を見て、ビックリしてた
 「化けたなぁ」って、感心してる ボクをナンパしようとしたんだ
 「今からどっか行こうぜ」って言葉に ボクはすぐに頷いた

 ゲーセン、カラオケ、ビリヤード 考えつくだけ遊び回ろう
 キミが良ければ最後まで ボクは女の子で居てみせるよ
 ちょっと悪戯を思いついて 彼の手を握ってみたんだ
 顔を赤くしたキミの顔が なんだか少しおかしかった

 楽しい時間はあっという間 ボクがアタシで居るときも終わり
 橙色に染まる街に ボクは少しため息が出た
 「楽しかったぜ」って言葉と一緒に 繋いでた手が外された
 「じゃ、明日学校で」 男のボクに、約束をおいて

 帰り道が寂しかった こんな気持ち、本当にはじめて
 女の子の世界は消えて 男の子の世界が顔を覗かせる
 この格好は楽しかったけど 反対にとても寂しいんだ
 だけど、ボクはこれを止めない またいつか、女の子になろう

 やっとボクはそれになれた 小さな頃から、憧れてたカタチ
 うんと楽しくて、ちょっぴり寂しい そんな世界が、待っててくれた
 思いはもっと募ってくる 早く来週になって欲しいな
 背中の羽根を伸ばして飛べる 素敵な休日が来て欲しい

戻る